第6回|アラバンでステーキハウス「Wooden Horse Steakhouse」を経営する田部井さんにインタビュー
フィリピンで暮らす日本人の皆さんに「フィリピンへ移住したきっかけ」や「現地での仕事、ビジネス・生活事情」などをインタビューし、フィリピン移住の良さや生活する上での厳しさ、メリット、デメリットなど、移住者の皆様にご協力いただきリアルな実体験をお届けする大好評の新企画!
今回で第6回目を迎え、前回インタビューさせていただいた「藤目さん」より移住の輪のバトンを繋いでいただき
アラバンでステーキハウスを経営するオーナーシェフの「田部井さん」にインタビューさせていただきました。
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その前に・・・
フィリピンで暮らす日本人は、パンデミック後
どのくらいいるの?
コロナウィルスの影響で現在も渡航制限が続いているフィリピンですが、ここフィリピンにはまだ多くの日本人が住んでいます。パンデミック後もフィリピンで暮らす日本人は意外とたくさんいらっしゃいます。
外務省による海外在留邦人数調査統計 令和3年版(令和2年(2020)10月1日現在) によると、
フィリピンで暮らす日本人は、パンデミック前までは年々増加傾向にあり、外務省で公開されている最新データでは、2019年は17,753人(前年比+5.1%増加)。
2020年コロナ後は激減したのでは?と思いましたが、実際はわずか-4.3%で2020年は16,990人。
16,990人の内訳は、長期滞在者10,977人(-7.5%)・永住者6,013人(+2.2%)の増加。マニラ首都圏は8,792人から8,208人(前年比-6.6%)という調査結果でした。この状況下でもフィリピン永住者は増加しており、アフターコロナでは更に増加するのではないかと思います。
国別在留邦人人数では、前年と変わらずフィリピンは17位。※(注)在留邦人:海外に3か月以上在留している日本国籍を有する者
また、パンデミック後に在留邦人が増加した国、減少した国は以下の通りです。
在留邦人が増加した国 | 在留邦人が減少した国 |
---|---|
カンボジア(+19.9%)、マレーシア(+16%)、タイ(+2.6%)・ベトナム(+1.2%)、その他パラグアイ・アラブ・ミャンマー・など。 | 南アフリカ(-24.3%)、コロンビア(-10.3%)、インド(-10.2%)、韓国(-11.3%)など。 |
フィリピンは移住先として選ばれる人気の国のひとつですが、移住するきっかけは皆さんさまざま。
日本→サイパンからフィリピンへ移住を決めた田部井さんに、そのきっかけを聞いてみました。
日本からサイパンへ。そしてフィリピンへ移住したきっかけは?
21歳の時にサイパンへ行き、そこでフィリピン人である現在の妻と出会いました。サイパンでは、レストランとダイビングを兼ねているお店で働き、サイパンで結婚し子供も授かりました。
ダイビング指導員の資格も持っています。最終的には妻の地元であるフィリピンに住むことを希望しており、本当はダイビングでフィリピンに来たい気持ちもありました。しかし、私がすでに50歳になる頃だったので、ダイビングは諦め現在の場所でレストランをオープンする事にしました。
元々は海が好きでセブ島にも興味はありましたが、妻の地元がタガイタイの近くカビテというところで、マニラは都会すぎてちょっと雰囲気が合わないと思った為、アラバンでレストランの場所を探しました。
ステーキハウス「Wooden horse steakhouses」をオープン
サイパンでもステーキを扱うレストランで働いており、ステーキの勉強をしました。
ツーリストはステーキ好きだし、フィリピンでもステーキのお店をオープンしようと思っていました。そしてここ「アラバン」でWooden Horse Steakhouses(ウッデン・ホース・ステーキハウス)というステーキ専門店をオープン。
ステーキのお肉は、フィリピンでアメリカと同じものを使っていても収入がまったく違うためフィリピン人にとっては、とても高いものになってしまいます。フィリピンでステーキハウスというと1人あたり「5,000ペソ~6,000ペソ」とお金持ちしか行けないイメージがあるので、どうしても警戒されてしまいます。
そこでどうしたらみんなに食べてもらえるか色々と考え、気軽にお肉が食べられるリーズナブルなステーキメニューを考案し、それが人気になっています。例えば「デンバーステーキ(550ペソ)」などが、初めてステーキハウスを訪れるローカルのお客様をキャッチしています。お肉は私が30年以上使っているアメリカのアンガス協会が認めたお肉を使用しており、この信用できる評判がいいお肉をフィリピンに輸入している会社があり、そこから仕入れています。
有名人も来店する人気店になるまで
レストランは2010年にオープンして今年で11年になります。
お店を始めてから5年位は大変厳しい時期でした。スタッフも慣れておらず、知らないお店で周りからは「ステーキハウスは高い。」というイメージもあり難しい時期でした。5年を越えたあたりから、日本人の口コミ等でお客様が増え軌道に乗ることができました。
ビジネスは最低でも3年と聞きますが、私たちは軌道に乗るまで時間がかかってしまいましたね。
オープン当初は、特に日本人をターゲットに考えていた訳ではありませんが、今に至っては日本人のお客様の口コミで、現在80%以上は日本人にご利用いただいております。日本からの研修旅行などで、一班50名ぐらいで総勢400名程の団体様にも毎年来ていただいております。
残りの20%は、主にフィリピン人ですが、ヨーロッパのお客様にもご利用いただいています。
近くにある「アヤラ・アラバン・ビレッジ」から富裕層のお客様も来てくれますね。サイパン時代のお客様でアメリカ(サイパン)の上院議員の方が訪ねて来てくださったり、数々の有名人の方にもご来店いただいております。
10年目にして「コロナの影響でロックダウン」で大打撃
ようやく軌道に乗り11年目を迎えようとした矢先、パンデミックに。
2020年3月ロックダウン後、一か月半はテイクアウトも出来ず、自宅待機の状態が続き辛い思いもしました。
それから徐々に規制が緩和され光が見えたのですが、また今年に入り規制が厳しくなってしまいましたね。
しかし、今年はテイクアウトが出来ることが救いでした。
ただ働いてくれているスタッフ全員が仕事に来れないため、スケジュールを組んで少しでもみんなが稼げるように交代でやりくりしていました。働いているスタッフも状況をわかってくれて、我慢して待機してくれていました。スタッフは辞めずにみんな継続できているので、そこはホッとしています。
今も決していい状況ではありませんが、ありがたいことに日本人のお客様が付いていてくれてます。
現在の検疫措置は「GCQ」でキャパシティーは「30%」ですが、お酒の提供と70歳以上の方の食事も可能になりました。ロックダウン後、以前と比べると売り上げはかなり落ち込みましたが、今は規制が緩和され日本人のお客様に来ていただいています。
売れ筋メニューは?
現在の客単価は、お昼はお弁当も販売しており「400ペソ」、夜は「1,000ペソ」位になります。
毎週火曜日にはプロモを実施しており、当店のメイン「リブアイのステーキ(225g)」をスープとワイン付で「1,188ペソ」で提供しています。
アラバンには日本人が多く住んでおり、特に仕事帰りの日本人のお客様からオーダーをいただいています。
また日本からの出張の方が「日本人のお店」と聞いて、来ていただけることもあります。
また以前のように通常に戻って、お客様が増えてくれることを願っています。
ビジネスを上手く回すコツは?
ビジネスを上手く回すコツは特にありません。
ただ日系企業の方たちが食事来られた際に、たまにサービスに感激していただけることがあります。
「どうやって指導するの?」と聞かれることがあります。
私としては特別なことはやっている意識はありませんが、ただいつも現場にいて常に目を光らせています。
そうしないとさぼったりするスタッフもいるので「ダメなものはダメ」とはっきり言うようにしています。
多くのフィリピンの人たちは、いつも相手の顔色をうかがっており「ここまではやっていい、ここからはダメだ」ということを敏感にチェックしています。そこを指摘してあげないとみんな動かないんです。
私はキッチンで調理していますが、手が空けば自分から率先してお客様のテーブルにご挨拶に行きお話したりしています。
そういうのをみてスタッフが何かを感じ、良いサービスに繋がっているのではないかと思っています。
フィリピンでレストランを始めたい方へのアドバイス
フィリピンは物価が安いので簡単に商売ができると考えている方が多いと思います。日本の財産をすべてフィリピンに投資して失敗して帰る方も沢山いらっしゃいます。
特に値段の事に関して、フィリピンは難しいと思います。例えばフィリピンではお昼ご飯に100ペソ以下しか使わない人たちが多いです。片や1,000ペソや2,000ペソ払える方もいます。
ターゲットを絞って何をやりたいか、何を売りたいか?
この辺をしっかり掴んでおかないと失敗してしまうかもしれません。
私も初めはそうでした。どうにかなると思ってやったけど、非常に難しかったですね。
海外生活は、日本より長く日本を21歳の時に出てから「サイパンに30年」、「フィリピンは今年で12年」になります。
21歳で日本を出たので、やっぱり日本でやり残したこと、やりたいことがありますね。最近、日本に帰りたいと少し思うようになりましたね。
フィリピンに来てからは5年ほど日本へ帰りませんでした。
ここ最近は、年に一度は家族で日本に行っていたのですが、今回のコロナの影響でしばらくは行けそうにないですね。コロナの前は孫を連れてスキー行ったりもしていたので残念です。
フィリピンに来てからほとんど休みなく、毎日働いていますが、ここは気候がよく物価が安いしみんな色々協力してくれるので住みやすいです。
国内旅行だと時々海に行ったり、リゾートを予約して一泊旅行に行ったりもしています。今はしばらくダイビングをしていませんが、以前はたまにバタンガスに潜りに行っていました。
また、フィリピン人なら誰でも知っているプロゴルファーで今年5月下旬に日本で行われたミズノオープンのチャンピョンJuvic Pagunsan(ジュビック・パグンサン)はゴルフ仲間で、ゴルフも楽しんでいます。
でもほとんど仕事がメインなので、頻繁に行くことはないです。
本当は息子に任せないといけないのですが、まだ心配でお店から出られないですね。(笑)
今後もここでレストランを継続されますか?
はい。今、キッチンには私と24歳の息子が立っており、妻と息子の奥さんが経理を担当しています。
まだまだ心配な部分もありますが、何とか息子たちに残せたらいいなと思っています。
日本に帰ることはないと思いますが、健康と病院の事は心配ですね。
病気にならなければ問題ありませんが、もしもの時に頼るのはやっぱり日本のお医者さんかなぁと思っています。
コロナの影響でかなりの日本人が帰国してしまい心配はありますが、また新しい人が入ってくると思います。また一年前に日本に帰国された方がフィリピンに戻ってきたという話を聞くと嬉しいですね。
自由に行き来ができるようになることを優先してほしいと思いますが、まずはワクチン接種が必要になるでしょうね。
フィリピンではワクチン接種率が少ないので、まだまだ長引くかもしれませんね。
ただ日本のワクチン接種が軌道に乗れば、日本からの入国は楽になるのではないかと思っています。
今後のアラバン周辺の動きは?
フィリピンに来て12年、アラバン周辺の発展はスゴイものがあります。
12年前も日本企業はありましたが、中国からこちらに移ってきたりでかなり増えましたね。
多くの人に知られている大企業やその下請けの企業なども沢山あって、企業によっては勤めていたスタッフ数もかなり増えていると思います。
サイパンでは、主にツーリスト相手のお店でしたが、フィリピンに来てからは、多くのサラリーマンの方々にご利用いただいたいます。
実は利用して頂けるお客様が毎日来ても飽きないように「カレーライス」や「カレーうどん」などの裏メニューも用意しています。仕事帰りに週に3回来てくださるお客様もいて大変助かっています。
今後も中国からフィリピンに移ってくる企業は増えてくると思います。
コロナ終わった後に期待しています。
今年中、来年初めあたりには、普通に戻ってくれることを願っています。
Wooden Horse Steakhouses |Instagram
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